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巻頭インタビュー(2026年7月)

フードパントリー活動 から見たこども支援                〜地域全体で子育てをすることが  当たり前の社会に〜

 さまざまなこども支援活動に取り組まれる中で、埼玉県内で初めてフードパントリー(※1)を立ち上げ、現在は「埼玉フードパントリーネットワーク」の理事長を務める草場澄江さん。長らくこども支援に携わってきた中で見えてきた課題や、これからの支援に求められることなどについて伺いました。

 

 

 

 

 

 

草場さん

認定NPO法人
埼玉フードパントリーネットワーク 理事長
草場(くさば) 澄江(すみえ)さん

 

越谷市で学校応援団コーディネーターを14年、民生委員・児童委員、主任児童委員を13年務め、2016年「せんげん台こども食堂」を、2018年「越谷子育て応援フードパントリー」と学習支援・こどもの居場所「ねむの木」を立ち上げ代表。2019年「埼玉フードパントリーネットワーク(SFPN)」を立ち上げ理事長。寄贈食品を受入れ県内71団体の子育て応援フードパントリー活動団体に分配する等、地域でひとり親支援やパントリー活動が円滑に行われるためのサポートを行う。SFPNは、2020年にNPO法人、2026年3月に認定NPO法人、同年地域再生大賞ブロック賞受賞。

 

 

 

プロフィール

--草場さんが地域でこども支援の活動を始めたきっかけを教えていただけますか。

 

 私は大学院を卒業後、小学校教諭の職に就いたのですが、子育てとの両立が難しく、辞めざるを得なくなりました。こどもたちのために十分やりきれなかったという思いが心の中にあって、教職を退いた後も「私にできることはないか」と常に考えていたことが原点です。
 子育て中も、小学校で図書ボランティアを務めたり、中学校では学校応援団コーディネーターとして学習支援に取り組んだりしました。そんな中、主任児童委員に推薦され、こども支援に携わったことで、経済的に困っているひとり親家庭が多いことが見えてきました。その頃新聞やテレビでこども食堂が取り上げられるようになり、「地域の中にこどもたちの居場所をつくれば、困っている子をみんなでサポートできる」と考えて、2016年にこども食堂を立ち上げました。
 高齢者や学生も参加して、毎回楽しく過ごすことができ、コミュニティ型としては大成功だったのですが、本当に手を差し伸べたい家庭のこどもの参加は2割にも満たなかったのです。

 

 

--その二年後には県内初のフードパントリーを開設されましたね。

 

 困窮している家庭のこどもとつながる手段を探している中で、フードバンク団体のセカンドハーベスト・ジャパンの倉庫を見学する機会があり、そこでフードパントリーが開催されていたのです。「これなら私たちにもできる」と考え、団体から考え方やノウハウを教授いただき、こども支援を主としたフードパントリーを開設しました。
 最初から100世帯を超える想定以上の申し込みがあり、ニーズの高さを実感するとともに、私たちがつながりたかった方たちと直接つながれる手応えを感じました。
 利用者から、泣きながら悩みを打ち明けられ、子育ての先輩である私たちが共感しながら聴いているうちに笑顔が戻ることもありました。相談できる大人が周りにいないひとり親の思いに応えることは、市民活動として私たちだからこそできることだと思っています。ただし、私たちは専門家ではないので、深刻な問題は関係機関などにつなげるようにしています。


 

--長年、こどもと関わる中で見えてきた、こどもを取り巻く環境の変化についてお話しいただけますか。

 

 コロナ禍はひとり親家庭にとって大きな出来事で、収入が半減したり、家賃が払えなくなったりする方が多くいらっしゃいました。その後、コロナ禍が収束しても暮らしが楽になることはなく、現在は食料品も含めた物価が高騰し、格差が拡大したと感じています。
 こどもの課題は見えづらいことが特徴です。こども自身「助けて」と声をあげることができません。また日本の社会には、子育ては親が責任をもって担うものという考え方が浸透しているので、親も自分自身で解決しようとする傾向が強く、地域の中で孤立してしまいがちです。私たちは、自立とは一人で頑張ることではなく、頼れる先をたくさん知って周りに頼りながら、子育てをしていくことだと考えています。

 

 

--フードパントリーが現在抱えている課題について教えてください。

 

 フードパントリーの活動は寄贈品を配付するだけで簡単だと考える方が多いのですが、実は保管や運搬など物流の問題が大きくのしかかります。食品の保管場所や、運搬する人材が確保できずに、活動継続を断念する団体が相次いでいます。
 そこで私たちは、「地産地消型のパントリー」の仕組みづくりを進めています。地域の企業や一般市民からの寄付を増やすことができれば、運搬の課題も軽くなりますし、地域の大人が地域のこどもを育てることにもつながります。


 

--活動継続のために行政や企業に期待することは何でしょうか。

 

 「共創社会」という言葉のとおり、行政や企業の皆さんには単なる支援者ではなく、一緒に知恵を絞るパートナーになっていただきたいと思います。
 また、私たちは活動費捻出のためファンドレイジング(※2)にも取り組んでいるのですが、行政や企業だけでなく一般市民の皆さんにも活動の意義を知っていただき、一緒に支えてくださることを願っています。

 

 

--これからのこども支援に求められることを教えてください。

 

 一番の目標は、地域全体で子育てを担うことが当たり前の社会になることです。こどもはこれからの日本や地域を支えていく宝です。それぞれの子育て家庭が、いろいろな人の力を借りて、その子が豊かに育っていくことだけを考えられるようになればよいと思っています。
 支援してもらった人はそのことをよく覚えていて、次は支援する側になる人もいます。以前、私たちが支援したこどもが大学生になって「次は僕の番だから」と、こども食堂を手伝ってくれたり、過去にパントリーを利用していたお母さんが「子育てが一段落したからお手伝いしたい」と申し出てくれたりすることがあります。
 そのような温かい福祉の循環が、地域で生まれるといいですね。

 

 

--最後に読者の方へメッセージをお願いします。

 

 一人ひとりが、地域のこどもたちのためにできることを考えてください。時間のある人は時間を使い、お金のある人は寄付をするなど、自分ができる範囲でよいので、行動を起こすことがとても大切です。こどもたちのための活動は、地域の未来や日本の未来にもつながりますので、みんなで支えていきましょう。

 

※1 フードパントリー ひとり親家庭など、さまざまな理由で日々の食品の入手が困難な家庭に対して、無償で食品を配付する活動
※2 ファンドレイジング 資金を募り、支援を受けること。募る過程で、社会の課題を示し、課題解決への参加者を増やしていく手法

 

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