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県社協のご紹介

巻頭インタビュー(2026年8月)

笑いでつなげる人と地域                                     ~県内の全市町村に落語の笑いを届ける活動を展開~

 介護職から落語家に転身した古今亭伝輔さん。埼玉県出身の仲間と一緒に、「埼玉に恩返しをしたい」と県内の全市町村を巡って落語の公演を開催する活動を続けています。落語家を目指した経緯や活動への思いなどを伺いました。

 

 

 

古今亭

落語家
古今亭(ここんてい) 伝輔(でんすけ)さん
【芸名】 古今亭伝輔 【本名】 和田洋一
1984年7月2日生まれ
埼玉県立志木高校卒業後、専門学校にて介護福祉士を取得
介護職を経て
2009年7月 古今亭志ん輔に入門
2010年1月 楽屋入り 前座名「半輔」
2014年6月 二ツ目昇進 「始」に改名
2024年9月21日 始改メ「古今亭伝輔」真打昇進
2017年 北とぴあ若手落語家選手権 奨励賞受賞
持ち前の明るさを生かし、切れのある楽しい落語をお届けしている。
寄席に加え、毎月開催の「伝輔劇場」各月開催「ささはた寄席」などの東京公演の他、地方公演などで活躍中。地元埼玉63市町村を巡る「しゃべって!さいたま」開催中。

プロフィール

東松山公演(2026年7月)
左から立川 志の太郎さん、古今亭 伝輔さん、林家 木久彦さん

介護の仕事を目指したきっかけをお聞かせください。

 

 私は高校時代に、特別養護老人ホームのボランティア活動に参加しました。大学の推薦入試の際に評価されるだろうという、よこしまな考えからでしたが、とても楽しくて自分に合っている仕事だと感じたのです。
 そこで高校卒業後は専門学校に入学して資格を取り、川越市の病院に就職して認知症高齢者の介護を担いました。私はもともと人を楽しませるのが好きだったのでレクリエーションの担当になると、張り切って劇や手品などさまざまな企画を考えて披露しました。毎日、変化のない生活をされている患者さんに少しでも喜んでもらいたいという気持ちが強かったですね。

 

 

介護職から落語家に転身された経緯をお話しいただけますか。

 

 もともと落語が好きなわけではなかったのですが、落語を題材にしたテレビドラマを見て興味を惹かれ、寄席に通うようになったのです。レクリエーションの時間に、見よう見まねで覚えたネタを演じたこともありました。そのうち、はなし家になりたくなって病院を退職したのですが、友人知人からは「絶対に無理だからやめておけ」と反対されました。しかし25歳で古今亭志ん輔師匠に入門。修業期間はつらいことの連続でしたが「前座」、「二ツ目」と順調に昇進し2024年にめでたく「真打」となりました。

 

 

県内を巡って公演を行う「地元落語 しゃべって!さいたま」を2023年にスタートされました。

どのような思いで始めたのですか。

 

 私は鶴ヶ島市出身ですが、小川町出身の林家木久彦さんとふじみ野市出身の立川志の太郎さんと3人で「埼玉で育ったから埼玉に恩返しをしたい」という思いで始めました。県内では落語の公演が少ないため、高齢の方から「寄席に行きたいけれど、都内まで足を運ぶのはつらい」という声を聴くこともあったので、県内63市町村を全て巡ることをめざし、落語を楽しんでもらおうと企画したのです。
 川越市で旗揚げ公演を開催して、これまで20数か所の市町村を巡りました。東武東上線沿線は3人の出身地ということもあって多くの自治体で開催できました。

 

 

公演活動を通して得られた成果を教えてください。

 

 落語を通して人と人がつながっていくことの素晴らしさを実感しています。公民館以外に飲食店で開催することも多いのですが、落語のあとでお客様とみんなで食事をすると、話がはずんで知らない人同士がつながります。また、例えば鶴ヶ島市で開催すると、周辺の市民の方も来てくれるので、地域を超えて交流の輪が広がります。
 私の落語を聴いた方が「面白かったから今日はお友だちを誘って来ました」と落語ファンの輪が広がることもうれしくて、この活動を始めてよかったなと思います。63市町村を巡り終えたら終了するのではなく、ずっと継続していくつもりです。

 

 

こどもたちの前で落語を披露することもあるそうですね。

 

 はい、こども食堂で開催したことがあります。ゼロ歳児から小学生、ボランティアの高齢者も参加して、普段の寄席とは異なる雰囲気だったのですが、このような場面にぴったりの分かりやすいネタがあるので披露したところ、盛り上がりました。
 また、公演活動とは別に、小・中・高校の授業時間に行う「学校寄席」を担当することがあります。小学校では落語を聴いてもらうだけでなく、みんなでそばを食べる仕草をまねたりするワークショップを開いて、落語に興味をもってもらえるように努めています。

 

 

落語の魅力について教えてください。

 

 古典落語は江戸時代から明治時代にかけて作られた話ですが、人間の本質は変わっていません。皆さんの周囲にもきっといる、ちょっと間抜けな人、そそっかしい人、ケチな人などが失敗する話が多いので共感しながらくすっと笑える。それが落語の笑いです。
 また、ひとりの落語家が何人かの登場人物を演じ分けながら、小道具の扇子と手ぬぐいだけを使ってストーリーを伝えていくことも魅力のひとつ。テレビと違って観客がそれぞれの頭の中で情景を想像するので、脳の活性化につながるといわれています。ぜひ話芸のすばらしさを堪能してください。

 

 

伝輔さんにとって笑いとは?

 

 私は笑いには大きな力があると感じていて、これまで笑うことができなかった人が笑えるようになれば、それは生きる力につながります。私の落語は陽気で明るいことが取り柄ですので、高齢者やこどもたちも含めた多くの人に、明るい笑いをどんどん届けていきたいと思います。

 

 

最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします。

 

 私は福祉の仕事を通して、人と人のつながりの大切さを学ばせていただきましたが、そのことが落語の世界を生きていくうえで生かされています。福祉の仕事は誇りを持てる仕事ですが、心身ともに疲れる仕事でもあります。そんなときはぜひ落語を聴きに来てください。

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