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巻頭インタビュー(2026年9月)

こどもも大人も笑顔で健康に過ごすために                     ~突然の病で気付かされた日常の当たり前のありがたさ~                               

 NHK「おかあさんといっしょ」で第10代体操のお兄さんとして人気を集めていた佐藤弘道さん。2年前に突然下半身の感覚がなくなる脊髄梗塞にかかりました。周囲のサポートと懸命なリハビリを経て、現在は後遺症と向き合いながら、講演会などで活躍しています。
 今回は病気になって気付いたことや、健康であり続けるために何が必要かを伺いました。

 

佐藤弘道プロフィール

医学博士
佐藤(さとう) 弘道(ひろみち)さん
1993年4月よりNHK Eテレ「おかあさんといっしょ」で体操のお兄さんを12年間、2005年4月より「あそびだいすき」を3年間、計15年間教育番組にレギュラー出演。
2002年有限会社エスアールシーカンパニー設立。全国で親子体操教室、講演会、指導者実技研修会、ファミリーイベントなどを実施。2015年弘前大学大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。親子体操について研究し、日本初の親子体操博士となる。
2024年6月脊髄梗塞を発症して緊急入院。3カ月後からリハビリ通院。現在は自力歩行が可能になり、後遺症と向き合いながら講演・研修などで活躍中。
主著に『ひろみちお兄さんの運動あそび』『親子でからだあそび』『知育絵本 ホネキンシアター』(各世界文化社刊)など多数。

ホネキンさしかえはがし

骨と筋肉のはたらきを知って自分の体に関心をもつことで、運動あそびに興味をもって取り組める『ホネキンシアター』

(世界文化社刊)。

追加A

突然の病に倒れた当時の状況をお聞かせください。

 

 発症は2年前の6月、その日は地方で保育園の先生方の研修会があったため午前4時に起きたのですが、左足にしびれがありました。キャリーケースをリビングで持ち上げたらそのまま左足から床の中に沈み込んでいく感覚があって倒れてしまったのですが、あまり気にせずに自分で車を運転して羽田空港まで行きました。空港についてからは腰回りが締め付けられるような痛みで脂汗と吐き気がしてきましたが、仕事先に迷惑をかけてはいけないと同行していた妻と相談して搭乗しました。
 機内ではさらに痛みが増して、着陸後は立とうとしても足が動かなくなり、車椅子で飛行機を降りて、そのまま病院の救急外来へ向かいました。

 

 

その時はどんな気持ちでしたか。

 

 病院では脊髄炎か脊髄梗塞かもしれないと言われ緊急入院。下半身の感覚は全くなく、その夜は「私の人生はもう駄目だ、どうやって死のうか」ということばかり考えていました。
 その後、脊髄梗塞と診断されたことから、直筆で病名と休業のお知らせを書いてSNSに投稿するとたくさんの応援メッセージが届き、リハビリにも力が入りました。また、作業療法士、理学療法士の皆さんは私に寄り添って指導してくださり、感銘を受けました。何より息子の「生きているならいいじゃん」の一言が心に響き、前向きになることができたと思っています。
 約3週間後に都内の病院、その後リハビリ専門病院へ転院。9月にNHKの「おかあさんといっしょ」65周年特番の収録のため退院し、その後は通院でリハビリに励み、ゆっくりですが歩けるようになりました。日常の当たり前のありがたさに気付かされる日々でした。

 

 

ご自身の経験を通して、日頃から笑顔で健康に過ごすには何が必要だと思われますか。

 

 病気になる可能性は誰でも、いつでもあります。ただそのときに前向きになれるかどうかがすごく大事なのです。体力が下がると行動力も下がりますので、病気になってもあきらめない力を身に付けるため、日頃からきちんと体力を上げておくことが必要です。それには普段の生活の中にプラスワンという意識を持つことです。例えば何となく歩くのではなく、今日は腕を大きく振って歩こう、ちょっと早く歩いてみようなど、普段やっている運動にプラスワンすると健康に近づけます。
 私はリハビリを続けていますが、リハビリは明日、明後日のためだけではなくて5年先10年先の体づくりのためのものです。食事もそうです。今日の食事は5年先10年先の健康づくりのためにあるのです。バランスのいい食事を心掛けてください。
 また、人と常に笑顔で接することがお互いに大事でありがたいということを皆さんにお伝えしたいと思います。病気になってから夜寝るときに、今日もいい一日だったなと思って寝たいと思うようになりました。そう思って一日を過ごすことで大切なことが見えてきます。

 

 

こどもの運動に関して、日常生活で意識すると良いことを教えてください。

 

 健康三原則である「運動・栄養・休養」は常に頭の中に入れておいていただきたいと思います。幼児期には体を動かすことを好きになってもらうのが一番大事です。逆上がりができなければいけない、跳び箱が飛べなくてはいけないということではなく、鉄棒や跳び箱を好きになってもらうことの方がすごく大事です。できなくてもいいよという余裕があったうえでの指導はすごく大事です。運動習慣が身に付いて自然と階段を上ったり下りたりすれば健康にも結びついてきます。また、栄養バランスの良い食事や睡眠も大事です。寝ないと筋肉も育ちません。

 

 

この病気を通じて学んだこと、伝えたいことを教えてください。

 

 私はよく講演で「CBA(コミュニケーション・バランス・愛)」という話をします。「人は一人で生きているのではない、必ず誰かに支えられながら自分がいる」ことを私は病気になって改めて感じたので、コミュニケーションはすごく大事だと思っています。親子、夫婦、嫁姑、先生とこどもたち、いろいろなバランスがありますが、バランスが崩れたとき、コミュニケーションが取れていると解決もしやすくなります。
 特に、愛については、こどもたちへは無償の愛をもって接することです。幼児期のこどもは遊びの中で人との関わりを持ちますが、疲れたときは先生や親の元に戻って充電し、充電が終わると安心してまた外に出ていく。ですから先生も親もこどもをいつでもぎゅっとしてあげられる態勢だけは常にとっておいて、信頼感と安心感をこどもたちにたくさん植え付けてください。

 

 

最後に読者へのメッセージをお願いします。

 

 こどもに関わる仕事をされている方はこどもがいることを、また、施設においては利用者がいることを、そして私たちもそういう施設があることを、それぞれ当たり前ではなく、ありがたいことだと考えてほしいです。当たり前ではなくなるとお互いがやさしくなれます。
 福祉関係者の皆さんはそれぞれ自分の役割があると思いますが、自分の仕事をしながら周りを見渡して、周りの人のことも考えながら是非連携していってほしいと思います。

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