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巻頭インタビュー(2024年12月)

吃音があっても接客の夢は叶えられる! 〜注文に時間がかかるカフェを通じて伝えたいこと〜

 幼い頃から吃音(※)による話し方の障害があり、人とのコミュニケーションに悩んできた奥村安莉沙さん。
 現在、同じ障害を抱える若者たちと共に「注文に時間がかかるカフェ」(以下「注カフェ」)の活動を通じて、一度は諦めたカフェ店員として接客する夢を叶えています。自身の障害とどのように向き合ってきたのか、活動を始めたきっかけや大切にしている想いについて伺いました。

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「注文に時間がかかるカフェ」発起人
奥村 安莉沙(おくむら ありさ)さん


 神奈川県相模原市出身。幼い頃から吃音があり、人との違いに悩んだ経験を持つ。26歳の時のオーストラリア留学での経験を機に、夢だったカフェの店員に挑戦。以降「注文に時間がかかるカフェ」として吃音の若者を支援する活動をしながら、映画『マイ・ビューティフル・スタッター』の字幕翻訳を担当するなど語学力を生かした活動も行っている。2022年には映画『注文に時間がかかるカフェ−僕たちの挑戦−』の制作・監督を務めたほか、講演やNHK Eテレ福祉番組のコメンテーターを務めるなど、吃音についての啓発活動を行っている。

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「注カフェ」に参加するスタッフのマスクには「してほしいこと」が書かれています。

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◀「注カフェ」の開店スケジュール等掲載のHPはコチラ

--吃音とは具体的にどういった障害なのでしょうか。

 吃音とは言いたいことが頭に浮かんでも、言葉としてスムーズに出すことができない話し方の障害です。現在、全国に120万人、100人に1人が吃音を抱えていると言われています。
 症状は大きく3つに分類されますが、私の場合、話そうとすると「・・・こんにちは」と音が詰まる難発が主な症状です。
 よく周囲の方から「自分も緊張しているときに言葉が出ない」と言われるのですが、吃音の症状はそれと異なり、例えば、家族で食事をしているときなど、全く緊張していない場面でも、症状が出ることがあるのが特徴です。こうした吃音の症状に対する社会の認知は低く、自分の名前が上手く言えないときに「名前を忘れたの?」と言われるなど、緊張していないのに緊張していると思われてしまったり、こどもの頃、友達から「変なしゃべり方」と言われたり、一緒に遊んでもらえなかったこともありました。
 私自身は小さい頃から人と話すことが大好きで、カフェの店員になることが夢でした。しかし、こうしたつらい経験や、成長するにつれて吃音の症状が重くなったことから、自分の話し方に自信が持てなくなり、いつしかその夢を諦めてしまったのです。

 

--一度は夢を諦めてしまった奥村さんが「注カフェ」を始めたのはなぜですか。

 きっかけは26歳でオーストラリアへ語学留学したとき、現地のカフェで接客に挑戦する機会を得たことです。その時、人と話すのが難しい障害のある男性スタッフが、身振り手振りでお客さんとコミュニケーションをとって楽しそうに接客している姿を見ました。吃音で上手く人と話せなくても、やりたいことを諦めなくていいのではと感じ、帰国後に夢だったカフェに挑戦しようと思ったのです。
 現在は、「注カフェ」という店舗を持たない移動式の1日限定カフェをオープンし、全国で開催しています。吃音を抱えた高校生以上の学生が接客を体験し、社会に向けて一歩踏み出す場と、吃音への理解を広げる場として活動しています。

 

--「注カフェ」に参加した吃音当事者の変化や期待することはどのようなことでしょうか。

 「注カフェ」では、当日参加したスタッフには、お客さんに対して「自分がしてほしいこと、知ってほしいこと」を名札やマスクに書いてもらうようにしています。吃音当事者には、普段、障害や生きづらさを隠していたり、それを伝えられないことで、周囲の気遣いとの齟齬(そご)が生まれてしまったりすることもある中で、当事者側から自身が求めることを発信できるようになってほしいという思いから行っています。この試みの結果、周囲に自身の障害のこと、欲求や要望を言えるようになった人もいます。しかし、一方で「注カフェ」という環境が整った場面以外ではなかなか話すことが難しいという人もいます。
 私の場合、話の途中で、「こういうこと?」と代わりに言われてしまうと、それが違っていても違っていると言えないことがあり、最後まで話を聞いてもらいたいという希望があります。反対に話すことに時間がかかるため、代わりに言ってもらうことで自分も言葉が出るときがあるといった理由で、代わりに言ってもらいたいという人もいます。当事者一人一人が自身の障害のことや思いを伝えることができれば、周囲の人も本人の気持ちに寄り添えるようになるのではと思っています。

 

--「注カフェ」を通じて奥村さんが大切にしていること、伝えたいことがあれば教えてください。

 一番伝えたいことは「吃音があってもやりたいことを諦めなくていい」「工夫すればどんな形であっても夢を叶えることができる」ということです。過去には「人と話すのが苦手なのに、なぜ接客をやるのか」「人と話さない仕事に就いた方がよいのでは」と言われたこともあります。しかし、私は人と話すことが好きですし、注文に時間がかかる接客があってもよいと思っています。カフェの店員以外にも吃音によって諦めてしまった夢がたくさんあるので、今後も同じ夢を持つ方たちと一緒に叶えていきたいと思います。

 

※吃音
話し言葉が滑らかに出ない発話障害のひとつ。
①連発(音の繰り返し)例「か、か、からす」
②伸発(引き伸ばし)例「かーーらす」
③言葉を出せず間が空く(難発、ブロック)例「・・・からす」
の3つに分類される。ほとんどが幼児期(2〜5歳)に発症する。

 

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