県社協のご紹介
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さいたま市緑区の見沼田んぼで、農業体験イベントの開催や世界各国の色鮮やかな唐辛子を栽培するサカール祥子さん。今回は、事業に対する思いや農福連携(※)による取り組みについて伺いました。
合同会社十色(といろ) 代表
サカール 祥子(さちこ)さん
東京農業大学大学院卒業後、就労継続支援A型事業所、福祉作業所、農福連携を推進するNPO法人に勤務。2021年3月に「合同会社十色」を設立し、「さいたまを激辛の聖地に!」をキャッチコピーに世界各国の品種の唐辛子を栽培するほか、農業体験イベントを多数開催。農福連携により活動を推進している。
「2021 SAITAMA Smile Womenピッチ」審査員特別賞、「令和6年度農山漁村女性活躍表彰 若手女性チャレンジ部門」優良賞を受賞
カラフルで珍しい品種の唐辛子を幅広く栽培
--農業や福祉に関心を持つようになったきっかけは何ですか。
大学では造園学科でまちづくりをテーマに勉強していました。大学の後輩の紹介で、見沼田んぼにある障害者のための「福祉農園」に学生ボランティアとして関わったのですが、まちづくりも障害のある方が関わる活動も「人がいない」「お金がない」という課題が同じであることに気づきました。
大学院卒業後は、就労継続支援A型事業所や福祉作業所で、障害者の就労に関わる仕事に携わっていました。ある時、市役所を訪れた際に、野菜販売をしていた福祉農園の方に久しぶりに会い、声を掛けていただいたことがきっかけで、農福連携を進めるNPO法人に勤めることになりました。活動を通じて、農業は障害のある方をはじめ、いろいろな方が働くのにいい現場だなと実感しました。
--起業されるまでの経緯についてお聞かせください。
NPO法人では、野菜を作って販売していましたが、障害のある人が生計を立てたり、職員の給与に還元したりするには収益が少ないので、みんながもっと働くことができる事業として農業体験を始めました。障害のある人に畑や田んぼの整備をしてもらうことで働く機会を増やそうと考えたのです。
しかし、直接野菜を作って売るのと、農業体験で対価をもらうのでは事業の方向性が違うため、事業を継続することに限界を感じました。農業を通じていろいろな人が働ける場所を作りたいという思いのもと、本格的に農業を行い、稼いでいくために、仲間とともに2021年に営利企業として「合同会社十色」を立ち上げました。
--十色では、どのようなことをされているのですか。
私たちは、この見沼田んぼの環境を次の世代に残したいという想いがあります。自分たちで生産するだけでなく、みんなで自然を感じることで守り残していきたいと思い、農業体験を行っています。
体験の中では、生き物観察や草取りなども必ず取り入れて、作物を育てるには環境の保全が必要だということを伝えています。現在は、親子での参加など一般市民の方だけでなく、企業向け研修の一環として農業体験を活用いただく機会もあり、田植えから稲刈りまで行ってもらっています。
また、農地は農地として活用していきたいので、唐辛子栽培にも力を入れています。設立当初の活動比率は農業体験が約8割でしたが、現在は唐辛子生産が8割、農業体験2割となっています。
--なぜ、唐辛子の栽培を選ばれたのですか。
一番面白そうで栽培できそうだったからです。このあたりでは里芋がよく作られていますが、私たちには収穫から出荷までの保管場所がないため、軽くてすぐ出荷できるものがないかさまざまな野菜を育てる中で、唐辛子も何種類か育ててみました。
唐辛子は辛いものだけでなく、辛くないものや形がかわいいものがあるので面白いと思い、世界で約3000品種ある唐辛子の中から十数種類の唐辛子を育てることにしました。設立して最初の一年は人脈作りとして、唐辛子を使ってくれそうなシェフや激辛好きの人、種屋や卸売り業者とお話ししながら情報収集し、販路を広げていきました。
現在は47種類を栽培し、一年で約12トン収穫しています。中には皆さんが知らないような品種もきっとあると思います。また、「この品種が欲しい」と言われたら翌年に届けられるようにしています。
--どのような形で農福連携をすすめて後に福祉関係者に向けてメッセージをお願いします。
私の場合は学生時代に患者会を紹介してもらったことが、起業につながりました。福祉関係者の皆さんには、若い人たちのために、現場を体験できる機会をたくさん作ってほしいと思います。
例えば小学生が福祉施設で体験学習したとしても、すぐに福祉への興味にはつながらないかもしれません。しかし、10年後に「あのときの職員さんは輝いていたな」と思い出し、福祉職を目指す若者が出てくるはずです。
過去と現在がつながって、ひとりの若者の未来が拓く。そんな魅力ある福祉の現場をつくっていただきたいです。
--最後に、読者はのメッセージをお願いします。
福祉に携わる方には、障害のある人など当事者と、外部との接点を作る架け橋の役割もあると思います。多様性が大事と言われる中、みんなが一緒にいられる状況を作っていく鍵になるのが福祉職の方だと思います。一緒に垣根をなくしていきましょう。
※農福連携 障害者や高齢者等が農業分野で活躍することで、自信や生きがいを持って社会参画を実現する取組