県社協のご紹介
県社協のご紹介
「埼玉県手をつなぐ育成会」は、全ての知的障害児者と家族が豊かに安心して普通に暮らせる社会を目指して活動する団体で、昭和28年に設立されました。今回は理事長の高野淑恵さんに、現在の活動内容や、障害者を取り巻く社会状況への思いなどを伺いました。
公益社団法人埼玉県手をつなぐ育成会 理事長
高野(たかの) 淑恵(よしえ)さん
1956年生まれ、東京都出身。早稲田大学卒。
2001年 越谷市手をつなぐ育成会 会長
2006年 特定非営利活動法人越谷市手をつなぐ育成会・友 理事長
2019年 公益社団法人埼玉県手をつなぐ育成会 理事長
2019年 一般社団法人埼玉県知的障害児者生活サポート協会 副理事長
2022年 全国手をつなぐ育成会連合会 理事
2022年 全国手をつなぐ育成会連合会 権利擁護センター委員長
越谷市手をつなぐ育成会会長として「重い障がいがあっても、人として幸せな人生を全うしてほしい」という親の願いを、すべての活動の原動力として、越谷市内で障害福祉サービス事業所(生活介護)「千草園」「野の花」、またグループホーム「しゅしゅ」を運営。2008年から埼玉県手をつなぐ育成会で「法人後見事業」を開始。
--「埼玉県手をつなぐ育成会」(以下、育成会)が目指していることや主な活動内容について教えていただけますか。
長い間、人としての尊厳が認められず、自由と権利が与えられなかった知的障害児者の権利を擁護することが、育成会の目指していることです。
2000年に成年後見制度が施行されると、私たちはすぐに法人後見事業を実施するための検討を開始し、2008年から事業をスタートしました。現在は「当事者が親亡き後も穏やかに、幸せに生きるために必要なツールのひとつ」と考えて、県内各地で68件を担当しています。法人後見推進事業部でケース会議を行い、地元の会員が後見スタッフとなって、専門職と連携を図りながら、一人一人にふさわしい支援を行っています。
その他、相談支援事業にも取り組んでいます。会員外の方が当法人のホームページなどを見て連絡してくださることが多く、寄り添いながら継続的に対応しています。また、県の委託事業として知的障害者の相談員研修を開催して、スキルアップにも努めています。
さらに権利擁護事業部では、制度や法律に関する調査研究のほか、権利擁護や虐待防止に関する研修会を開催しています。
--全国手をつなぐ育成会連合会(以下、全育連)の役員も務めていらっしゃいますが、いま全国各地で広がっている「啓発キャラバン隊」の活動について伺えますか。
地域の方に知的障害児者の障害特性を正しく理解していただくことはとても重要です。全育連では、疑似体験などを通して理解を広める「啓発キャラバン隊研修会」を開催して、全国にキャラバン隊を設置する取り組みを進めています。埼玉県も立ち上げたところで、これから強化に努めていきます。
啓発活動はとくに警察関係者に向けて積極的に働きかけています。知的障害児者は行方不明になって警察にお世話になったり、不審者として見られてしまったりすることがあります。職務質問などを受けても適切に答えることは難しく、過去には冤罪事件も起きていることから、そのような悲劇を防ぎたいという思いがあります。
よく「当事者の方とコミュニケーションを図るにはどう接したらいいですか」という質問を受けますが、アプローチ方法は一人一人異なります。まずは観察してください。そして「おはよう」といったごく普通の声掛けをしてください。最初のうちは、反応がないかもしれませんが、「おはよう」が積み重なったとき、突然返事が返ってくることがあります。「時間はかかるのですが、分かり合えないことはないですよ」と、お伝えするようにしています。
--育成会の活動に関わるようになった経緯をお聞かせください。
私の息子は最重度の知的障害児として生まれました。毎日「どうしよう、どうしよう」と悩みながら、他の方と交流することもなく、親子3人だけの小さな世界で生きてきました。
養護学校(現在の特別支援学校)に通っていたのですが、高等部を卒業した後のことについて大きな不安を抱くようになった頃、育成会の前身となる「手をつなぐ親の会」のことを知ったのです。同じような境遇で同じように頑張っている方たちと出会えたことは、真っ暗な深淵で見つけた一筋の希望でした。そこで「この会に入って勉強してみよう」と地元の越谷市の会に入会したのです。息子が中等部2年のときでした。
それから越谷市の会長職に就いたのですが、2006年に障害者自立支援法が制定され、それまでの小規模作業所を国の基準に合った法内施設に建て直す必要に迫られたのです。怒涛のような大変な毎日でしたが、会員の皆さんがそばで助けてくれたので、「こどもたちのために」という強い思いで、新たな居場所をつくることができました。現在、生活介護事業所2カ所、グループホーム1カ所を運営しています。
--障害のある人を取り巻く現在の社会状況について、どのように感じていらっしゃいますか。
日本では知的障害児者の福祉は長い間「家族ありき」が前提で、まだまだ根っこの部分に残っています。また家族の側もひとりで抱え込んでしまう傾向がみられます。外国のように誰でも20歳くらいになると自立して家を出ていくという社会的慣習がないため、障害のある子を自立させるという気持ちになることが難しいと実感しています。
私は差別や虐待は減ることはあってもゼロにはならないと思っています。しかし、減らす努力は絶対にしなくてはなりません。津久井やまゆり園の事件後、激励のお手紙に交じって、犯人の考えに賛同するという趣旨のお手紙も少なからず私たちのもとに届きました。
ですから権利擁護は絶対に忘れてはいけませんし、親が生きている間だけでなく、親亡き後も本人を守ることができるような社会体制をつくっていかなければなりません。そのためには個人の力ではなく組織の力が求められます。
ところが、育成会は全国的に会員数の減少が進んでいて、埼玉県でも課題のひとつです。数は力ですので、会員数が少ないと組織として力が発揮できません。とくに、若い方に入会していただきたいと考えています。
--最後に育成会も社協と同様に共生社会の実現のために活動されていると思いますが、実現への思いをお聞かせください。
共生社会という言葉を初めて聞いてから年月が経ちましたが、なかなか実現しません。しかし、理想というのは高く持つべきです。実現のためには当事者と親だけではなく、さまざまな団体や機関を巻き込んでいくことが必要ですし、地域の社協さんのことも頼りにしています。最初は絵にかいた餅でも、あきらめずに努力を重ねていくことが大切だと思っています。