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県社協のご紹介

巻頭インタビュー(2024年7月)

生きづらさを抱える若者に どのように向き合うか ~若者の生きる力を信じて見守ろう~

 幼少期の虐待体験から薬物依存症になった風間暁さん。信頼できる人に出会い、依存症から回復した今、風間さんと同じ依存症に悩む若者やつらい思いをしているこどもたちを減らすために活動しています。
 今回は、生きづらさを抱える若者やこどもたちに、大人はどのように向き合ったらよいか、ご自身の経験からヒントを伺いました。

p02プロフィール用

NPO法人ASK社会対策部
認定依存症予防教育アドバイザー・保護司
風間(かざま) 暁(あかつき)さん

 

特定非営利活動法人ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)社会対策部所属。自らの経験をもとに、依存症と逆境的小児期体験の予防啓発と、依存症者や問題行動のあるこども・若者に対する差別と偏見を是正する講演や政策提言などを行っている。2020年度「こころのバリアフリー賞」を個人受賞。分担執筆として『「助けて」が言えない 子ども編』(松本俊彦編著、日本評論社、2023)、著書として『学校で教えてくれない本当の依存症』(松本俊彦+田中紀子監修、合同出版、2023)。

p02_提供写真

依存症についてマンガと会話形式で紹介しています。=合同出版提供

--風間さんはどのような活動をしていらっしゃいますか

 特定非営利活動法人ASKの社会対策部に所属しています。ASKは40年以上にわたり、アルコールやギャンブルなどの依存症に悩む人を医療や自助グループなどと連携して支援している団体です。私は依存症の予防教育など社会に働きかける活動を行っています。

 

--生きづらさを抱えた若者やこどもは、なぜ何かに依存したり、居場所を求めるのでしょうか

 困ったことをする子は、困っている子なんです。親、兄弟との不和などで家にいたくない、学校でうまくいかなくて、外に居場所を求めているのです。それと、思春期は楽しそうなカルチャーに引き寄せられますよね。

 今、「トー横キッズ」が話題になっていますが、なぜトー横(※1)に集まるのかというと、トー横にいる子は「めっちゃOD(※2)してる」「めっちゃオシャレ」とメディアが報道することで“トー横”というカルチャーができたからなんです。

 もう一つは、他に居られる場所がなくなったからです。渋谷は監視カメラがついたり、警告が鳴ったり、ベンチもたまれる場所もない。クラブなども年齢確認が厳しくなりました。でも、トー横には誰も「帰れ」と言わない心理的安全性があるんです。

 トー横にいない子は、SNSで「神待ち」といって、泊めてくれる優しそうな男性を探します。知らない男性から知らない薬を飲まされるより、トー横で、何が入っているのか分かっている市販薬をODする方がまだ安全なんです。

 トー横に集まるのは、私からすると、メディアのせい、親や教師のせい、警察のせい、政治のせい、全部大人のせいですね。

 

--そのような若者やこどもにどのように関わっているのでしょうか

 ただ遊びます。フラットな関係で友達になることを考え、「支援者」という肩書ではできない関わり方をしています。

 彼らは傷ついて、全身に鎧を身にまとっている状態です。そこに、「助けになりたい」という支援者という違う鎧を着て行ったら、ただ怖いだけで身構えてしまいます。

 だから私は丸裸で行って、私の話をして、「私が話したんだから、あなたも話してよ」と言うんです。「マジ、親うぜぇわ」「うぜぇな。そりゃ今日、ここ来るよな」みたいなフラットな友達同士の会話から少しずつ情報を蓄積して、日々の遊びの中で話してくれるのを待っています。彼らがもし現状をどうにかしたいと思ったら、「こんな支援団体あるけど行ってみる?」と気軽に情報を投げ、情報を伝えるだけでもいいし、一緒に行ってもいいし、適切なところにつなぐということをしています。

 

--若者やこどもと関わるうえで必要なことは何でしょうか

 彼らは支援者とは全く違う世界に生きています。彼らの世界にお邪魔させていただくというリスペクトを持つべきだと思いますが、多くの大人たちはそれを怠っています。

 彼らが興味を持っていることを知っていれば、同じ目線で話ができます。壁が壊れる、この人には話してもいいかな?と思わせるポイントは案外そういうところです。

 私は、こどもの世界に踏み込むとき、こどもの言語を持ち、こどもの物差しで測ることを心掛けています。彼らが困ったときに相談しようとする相手は友達です。そんなとき、安全な大人の友達がいると便利ですよね。私が信頼してもらえるのはそういうことです。

 

--風間さんは保護司としても活動していらっしゃいますね。

 保護司になろうと思ったきっかけは「私みたいなのが保護司になったほうが良くない?」と思ったからです。

 こと若者においては、例えば保護観察処分になって最初に渡される面会カードを、一生懸命バイトして買ったブランド物の財布に入れて持ち歩きたくないから結局失くすわけです。失くしたことを怒られるから保護司には会いたくない。それに保護司と会うより、友達と遊んだほうが楽しいから行かない。そうしてフェードアウトしていくと、再犯につながりやすくなり、より危ない方向へ行ってしまいます。

 だから、私は若者が会いに行きたくなる保護司を目指していました。保護司として担当した子たちとは未だに仲良しで、関わりは終了しても、しょっちゅう連絡をくれたり遊んだりしています。

 

--若者を支援したいという方々へ活動のヒントをいただけますか。
 世代が違えば価値観も違うということを理解する必要があります。「大変だよね、君たちはさ・・・」と分かろうとすることが大前提です。私が一番信頼できる年配の方は「こんな社会にしてごめんなさい」という謙虚な気持ちをちゃんと持っている人です。

 それと、大人が楽しそうにすることが大切です。「生きてるって楽しいぜ」と背中で見せてくれるだけで十分です。それを実行しやすいのが、保護司や民生委員・児童委員だと思います。

 クソバイス(※3)はやめて、ただ一緒に過ごす、一緒に遊ぶ時間を大事にするだけで、若者は能動的にいろいろなものをつかみ取っていきます。

 彼らはどうにかなりたいと思ったら、自分でどうにかする力を持っています。依存症の支援に、失敗しても相手を信じて見守る“タフラブ”という概念があります。保護司や民生委員・児童委員には、若者が失敗したときに適切な距離で関わってほしいと思います。

 同世代を支援したいという若者には、自分のことも大事にしてねと言いたいです。誰かを助けるためには、自分が元気で健康でないといけません。自分を常に助け続けることが大切です。私と一緒に誰かを助けられる道を探していきましょう。

 

※1 トー横:新宿・歌舞伎町の一角にある、行き場のない若者のたまり場
※2 OD:オーバードーズ。薬の過剰摂取
※3 クソバイス:自分の持論を押し付けているだけの役に立たない助言

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