県社協のご紹介
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長く子育て支援に取り組んできたNPO法人が、中高生に向けた居場所を開設。「オスキニドウゾ」というコンセプトで運営し、大勢の若者が集う居場所となっています。若者支援を始めたきっかけや、活動の状況を取材しました。
NPO法人AIKURU
理事・施設長・利用者支援員 村野裕子さん
以前は幼稚園教諭として勤務していましたが、出産を機に退職。その後は子育て支援活動に参加してその楽しさに目覚め、現在に至っています。
楽器を弾いたり、ボードゲームを楽しんだり、宿題や受験勉強をしたりと自由に過ごします。「何しに来たの?」と、参加する目的を問われないことが良いという意見が、子どもたちから多く寄せられるそうです。
NPO法人「AIKURU」は2004年の設立以来、全ての子どもたちが幸せに過ごせるように、親支援、家庭支援、地域支援、次世代育成事業に取り組んできました。現在入間市内に3カ所の常設広場と6カ所の出張広場を開設。子育て親子が交流する場の提供や、相談援助のほか、多彩な活動に取り組んでいます。
2020年にはさらに中高生のための居場所「AIKURU FREE BASE」(以下、フリーベース)をオープンしました。子育て支援活動に取り組んできた団体が若者支援を始めたきっかけについて、村野裕子さん(理事・施設長)は次のように説明します。「幼少期からAIKURUの子育て支援活動に参加してきた子どもたちが中高生になり、彼らから相談を寄せられる機会が増えてきたのです。私たちとは長い年月のなかで関係性を築いてきたので話しやすいのでしょう。相談内容は親とのけんかや学校でのいじめ、不登校などです」。
村野さんは中高生の話を聴くなかで、家と学校以外に若者が安心して過ごすことができる居場所の必要性を感じ、活動をスタートしました。会場となるのは、西武池袋線入間駅から歩いて10分ほどの「子育て家庭支援センターあいくる」です。毎週金曜の17時から21時まで開放し、毎回20数人の若者が参加します。
多様な子どもが混在する社会の縮図のような空間
フリーベースのコンセプトは「オスキニドウゾ」。何をしてもいいし、何もしなくてもいい。おしゃべりを楽しむグループもあれば、ひとりで絵を描いている参加者もいます。決められたプログラムはありませんが、夕飯を作ることは恒例になっています。支えるスタッフは3〜4人。一緒に遊んだり、個人的な悩み事を聴いたり、臨機応変に動きます。子どもたち自身が企画して、準備を進めて球技大会や二泊三日の旅行を実現したこともあります。
参加者のなかには、部活に打ち込んでいる子もいれば不登校の子、特別支援学級在籍の生徒などが混在しており、村野さんは「多様な人が混在する実社会の縮図のような空間になっているのは、子どもたちにとって良いこと」だと考えています。
場を設置しているのは法人ですが、運営するのは若者たちの力。困ったことが起きると年長者の高校生が中心となり、自分たちの力で解決しようと話し合いを持つこともあります。
居心地のよい空間だということが口コミで広がり、参加者は増え続けています。以前、新宿のトー横(※)に通い詰めていたという子どもは「ここを知っていたら、トー横には行かなかったのに」と話したといいます。いま、若者向けの居場所のニーズが高まるなか、「フリーベース」の先進的な取り組みが注目されます。
楽器を弾いたり、ボードゲームを楽しんだり、宿題や受験勉強をしたりと自由に過ごします。「何しに来たの?」と、参加する目的を問われないことが良いという意見が、子どもたちから多く寄せられるそうです。
※トー横とは、新宿区歌舞伎町「新宿東宝ビルの横」を省略したもので、家庭や学校に居場所がない若者たちが集まる。飲酒や市販薬の過剰摂取などのトラブルが相次ぎ、問題となっている。