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巻頭インタビュー(2025年8月)

勝手に決めつけないで ぼくたちの思いをよく聞いてください! ~障害当事者としてメッセージを発信~ 

   障害当事者の堀口旬一朗さんは、講演活動に力を入れ心に響くメッセージを発信しています。また、ダンスや演劇の表現活動にも挑戦し続けています。今回は堀口さんのこれまでの活動や思いについて伺いました。併せて堀口さんを25年以上にわたり支援し続けてきた、社会福祉法人清心会理事長の岡部浩之さんにも「通訳」(※1)としてお話しいただきました。

 

 

 

 

p02プロフィール用

社会福祉法人清心会 アンバサダー
堀口(ほりぐち)旬一朗(しゅんいちろう)さん

 

1983年生まれ。秩父市出身。ダウン症・知的障害。現在、多機能型事業所さやかワークセンターに所属し、パンやラスクの製造販売に従事。2009年より障害者ダンスパフォーマンスチーム「ハンドルズ」のメンバーとして活動。2012年に東京大学「市民後見人養成講座」で講演したことを契機に講演活動をスタート。2023年より「東京演劇集団 風」の研修生として活動。ホームヘルパー2級資格を保有。2024年「第10回糸賀一雄記念未来賞」受賞。1993年愛媛県に生まれる。

ラジオ

法人理事長の岡部浩之さんと地元のちちぶFMにも出演

 

ダンス

持ち前のユニークなアクションで観客を魅了

 

--堀口さんの日々の活動についてお話しいただけますか。

 

 堀口 清心会のアンバサダーとして法人の広報や宣伝の活動をしていますが、毎日の仕事は、パンやラスクを作って販売することです。「旬なコッペ」(旬一朗の“旬”と季節の“旬”を掛け合わせたコッペパン)は人気があって、「おいしかったよ」とよく言われます。また、近くに小学校があるので、下校時にはこどもたちの見守り活動に参加しています。
 また、毎日1時間、グループホームで食事を運んだり、食器を洗う仕事もしたりしています。おじいちゃん、おばあちゃんが大好きで人をお世話するのも好きなので、頑張ってヘルパー資格も取りました。

 岡部 「資格を取りたい」という旬一朗さんの夢の実現を、法人としてもサポートしようと考え、週3回、職員がつきっきりで予習復習を行いました。当時、ヘルパー2級の資格取得には130時間の受講が必要でしたが、旬一朗さんは倍の260時間かけて根気強く勉強を続け、見事に合格しました。

 

 

 

--これまで100回以上、講演活動を積み重ねられていますが、きっかけを教えてください。

 

 岡部 講演活動は、旬一朗さんにとって大きな転機となった取り組みのひとつです。十数年前に東京大学から講演依頼があり、初めて大勢の聴衆の前で講演したときのことですが、旬一朗さんが話し出すと一転して視線が集まり、ドッと笑い声が起きたり、すすり泣きが聞こえたりしました。そして最後には割れんばかりのスタンディングオベーションが起きたのです。
 そこで「旬一朗さんの言葉には人の心に響くものがあり、伝える能力が高い。これは彼の強みだ」と思い、講演活動に力を入れるようになったのです。
 当初は「障害を乗り越えて、真面目に頑張るダウン症の青年」と紹介されることが多かったのですが、彼のなかに「障害に打ち克つ」といった思いは一切ありません。いろいろなことにチャレンジしていますが、それは一人の青年としての普通の行為であり、普通の思いを述べただけなのです。

 堀口 講演でぼくの話を聞いて、ぼくたちの味方になってくれた人が増えたことはとてもうれしかったです。講演を終えた後お客さんから「旬ちゃんが一生懸命、みんなの前でお話しすることで、仲間たちがもっと暮らしやすくなったり、働きやすくなったりするんだよ!」と言ってもらいました。

 

 

 

--もう一つの転機が、ダンスと演劇という舞台芸術での活躍ですね。

 

 岡部 もともと人前でパフォーマンスすることは得意でしたが、二人の演出家との出会いによって、人真似ではない、旬一朗さん独自の表現が確立されました。一人は「コンドルズ」というダンスチームを主宰されている近藤良平さんです。旬一朗さんが参加している障害者のダンスチーム「ハンドルズ」の演出も担当されています。もう一人は「東京演劇集団 風」の芸術監督、浅野佳成さんです。
 私たちにはもう十分だと思える演技についても、お二人は「旬、もっと大きく、思い切り!」と、よりスケールを大きくするような声掛けをされます。その結果、旬一朗さんのなかに眠っていた可能性がどんどん引き出されて開花していきました。
 先日、旬一朗さんの演技を見たダウン症の少年が感激して「大きくなったら、旬一朗さんみたいになりたい」と話したと、少年のお母さんがうれしそうに教えてくれました。

 

 

 

--堀口さんは家族をとても大切にされていると伺いました。

 

 堀口 はい。お父さん、お母さんと姉弟がいますが家族はぼくにとって「絆」であり、一番大切です。昨年、糸賀一雄記念未来賞(※2)を受賞したとき、ぼく自身、うれしかったのですが、家族が喜んでくれたことが、もっともっとうれしかった。お母さんはうれし涙を流してくれました。

 岡部 旬一朗さんはご家族に深く愛されて育ってきたので、家族愛にあふれています。旬一朗さんの実家は市内で有名な中華料理店を営んでおり、こどもの頃から接客も含めて、お店の手伝いをしてきました。そのような育ち方をしたからこそ、講演や舞台芸術など、大観衆の前ですばらしいパフォーマンスを披露できるのではないでしょうか。全ての活動は、「家族のために」というキーワードに帰結すると思います。

 

 

 

--最後に読者の皆さんに向けてメッセージをいただけますか。

 

 

 堀口 皆さんにお願いがあります。ぼくたちの思いを、よく聞いてください。勝手に決めつけないでください。うまくしゃべれないかもしれないけど、よく聞いてくれれば、分ってもらえることがたくさんあると思います。
 そして、皆さん、ぼくたちの通訳になってください。ぼくたちには、やりたいことや、お話ししたいことがたくさんあるのです。夢や希望、チャレンジする勇気も、いっぱいあるのです。
 ぼくたちのことを通訳してくれる人がたくさんいれば、ぼくたちは、もっともっといろいろなことができると思います。もっともっといろいろなことにチャレンジしたいのです。
 時間がかかるかもしれないけれど、ゆっくりかもしれないけど、それでも最後まで自分の力でやりたいのです。その機会を奪わないでください。どうか、ぼくたちの思いを分ってください。味方になって応援してください。
 これから全国の仲間たちと一緒に、楽しいことや面白いこと、笑顔になれることをたくさんやっていきたいと思います。

 

※1 通訳 障害を理解し当事者を応援してくれるサポーターの意
※2 糸賀一雄記念未来賞 障害福祉分野で今後一層の活躍が期待される人に贈られる賞

 

 

 

 

 

 

 

 

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