県社協のご紹介
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「介護予防をもっと広めたい」と強く感じ、現場、動画配信の両方で発信を続けている“てつまる”こと辻徹郎さん。高齢者が笑顔になり、元気になっていく姿を見るために、介護予防に効く体操やレクリエーション(以下、「レク」)を数多く提供しています。その思いや取り組みについて伺いました。
合同会社てつまる代表
柔道整復師・介護予防YouTuber
てつまる(辻(つじ) 徹郎(てつろう))さん
1989年千葉県千葉市生まれ。柔道整復師の資格を取得し、機能訓練指導員として運動型デイサービスに勤務。そこでの経験から介護予防は元気なうちからの運動が大切だと思い、2016年に独立し高齢者の体操教室を開催。2019年介護職員向けにYouTube「てつまるチャンネル」を開設し、“介護予防YouTuberてつまる”として活躍。2022年「合同会社てつまる」を設立。身体機能に合わせたオリジナルの体操・レクリエーションを提供。2023年『楽しみながら自然に体が強くなる 高齢者の新しいレクリエーション』を出版(日本文芸社)。2025年現在、YouTubeチャンネル登録者4万人超、各地で介護予防セミナー・講演会等を開催。
--現在の活動に至った経緯をお話しください。
私は、高校時代にバスケットボールをやっていて、怪我をするたびに整骨院に通っていたことが柔道整復師を目指すきっかけとなりました。資格の取得後、私は通所施設で機能訓練指導員として従事しました。通所施設に勤務したのは、幼少期から近所づきあいの多い地域で育ち、お年寄りが好きだったからです。
通所している方は片まひがあったり、認知症で短期記憶が低下していたりなど、何かしら疾患を抱えていました。そのような症例を見ていく中で、元気なうちに運動をしていれば脳梗塞を起こさずに済んだのではないか、認知症も予防できたのではないかと思うようになりました。そこから高齢者が介護状態にならないためにできることをサポートしていきたいと思うようになり、それが4年後に独立したきっかけです。
独立後、まずは公民館などで高齢者のための体操教室を始めましたが、最初は人も集まらず、自分でチラシを作りポスティングをしたり、新聞に折り込み広告をしたりもしました。その後、教室に来た高齢者の方々に、リハビリや整体の個別指導を呼び掛けて少しずつ顔と名前を知っていただきながら仕事を広げていきました。
そんな中、体操教室に参加している皆さんがとても楽しそうに体操しているので、動画にしてYouTubeで配信したらこの楽しさが広がっていくのではないかと、体操やレクの内容に悩んでいる介護現場の職員向けに投稿してみました。それがちょうどコロナ禍で行動が制限される時期だったので好評をいただき、いろいろなお仕事に声をかけてもらえるようになりました。
--介護予防に対する考え方をお聞かせください。
よく運動イコール介護予防と思われがちですが、私はイコールではないと思っています。人と関わること、社会的にコミュニケーションに参加することも介護予防につながると思うので、私はそのきっかけの一つとして体操を位置付けています。家から出るきっかけがあれば、それは全部介護予防です。そうしたきっかけが増えれば、元気な高齢者が増えると考えています。
--介護予防の活動で、一番大切にしていることは何ですか。
楽しければ、ひとまずはそれでいいと思います。どんなに効果があると言われても嫌な運動はしたくないし継続できません。楽しみながらやって、気付いたら元気になっていたというのが私の理想です。一番大切なのは、高齢者だからできないだろうという先入観をもたないことだと思います。新しい体操やレクのメニューを思いついた時には、できる、できないはともかく、高齢者の身体機能では無理だろうという思い込みは抜きにして、とりあえずやってみるように心がけています。
大事なのは、最初はできなくても、根気よく頑張ればできるということを体験することです。できそうでできないことをやると、脳にとっても、場の雰囲気づくりとしてもいい効果があると思っています。「できなくておかしくて笑っちゃう」というような笑いが起きればみんなが笑顔になります。
--体操教室の参加者や動画の視聴者からはどのような反響がありましたか。
体操教室で運動する高齢者向けと、動画の視聴者向けとは、活動自体を分けて考えています。体操教室に集まる方たちは、来ることが一つの楽しみになっていて、生活していくうえでの活力になっています。「来ることで前より速く歩けるようになった」「立ち上がりが楽になった、楽に動けるようになった」という声が私にとって一番のやりがいです。
一方、動画の視聴者は40~50代の介護職員が多いのですが、「レクが好きになった」「人前に立つのが怖かったけれど、この運動をやったら利用者がとても喜んで、レクが好きになるきっかけになった」という声をいただけたのがうれしかったです。
このように、皆さんに喜んでもらえることが、私にとってのモチベーションアップにつながっています。このような喜びをこれからも増やしていきたいと思っています。
--最後にメッセージをお願いします。
若い方でしたらインターネットでコミュニケーションがとれると思うのですが、高齢者の場合は実際に交流できる場所が一番だと思っています。専門職の皆さんには、場所をつくるだけでなく、さまざまなツールを活用し、高齢者にその情報をお届けすることで、高齢者が参加できる機会を少しでも増やしていただければと思います。
また、今後少子化が進むと介護できる人が減っていきます。一方で介護施設への入居者や利用者は増えていきます。この現実を、私は高齢者の方々にも知っていただいて、自分だけは大丈夫と思わず、いつまでも自宅で元気でいてほしいと思うのです。
そのため、今後も全国各地を回ってたくさんの人たちとつながりをもって、介護予防のための体操やレクを広め、思いを共有できる人たちと一緒に活動していきたいと思っています。