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巻頭インタビュー(2026年2月)

「世界一やさしいチョコレート」でつくる“つながり”           ~患者と周囲の人が同じ喜びを分かち合う~

 学生時代に起業し、世界一やさしいチョコレート「andew(アンジュ)」を開発した医師の中村恒星さん。食べることに困難を抱える難病患者と周囲の人が一緒に「おいしいね」と分かち合えることを目指しました。医師と起業家の二刀流で活躍する中村さんに起業のきっかけやこれからの思いを伺いました。

 

 

 

 

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株式会社 SpinLife 代表
医師
中村(なかむら) 恒星(こうせい)さん

 

 

1995年岐阜県生まれ。富山大学薬学部から北海道大学医学部医学科に学士編入。2020年1月北海道札幌市に株式会社 SpinLifeを創業。同年5月に世界一やさしいチョコレート「andew」の販売を開始。創業から累計で1万枚以上を売り上げ。「andew」を通して「患者と周囲の人々が病気と共存し、理解し合い、手を取り合う世界」の実現を目指している。

 

プロフィール写真

栄養があっておいしいチョコレートを目指し、何度も試行錯誤したという商品開発中の様子

 

--andewを開発されたきっかけを教えてください。

 

 私は当時薬学部の学生だったのですが、もっと臨床的なことに関わりたいと思い、北海道大学医学部2年に編入しました。しかし「卒業するまでにあと5年もあるので、医学の勉強だけでなく、他にも有効に使いたい」と考えました。
 そんな中「表皮水疱症」という難病があることを知ったのです。生まれつき皮膚と皮膚をつなぐタンパク質が欠損しているため、皮膚が地滑りのようにめくれてしまう病気です。大学の皮膚科の先生からこの病気について説明を受ける中で、「患者さんと会ってみたら」と患者会を紹介していただきました。
 患者さんとの交流を通じて、生活の困りごとや医療に対する不安などをいろいろと伺うことができました。服を着たりシャンプーをしたりする際も痛みを感じる方がいるなかで、食べることに困難を抱えている方が多いことも知りました。「ポテトチップスを食べると、針の付いた板を食べているくらい痛い」と話す方もいます。特に成長期のこどもにとって限られたものしか食べられないことは、心身の成長にマイナスの影響を与えます。
 そこで「患者さんのために食べることを支援しよう」と、私のなかで小さなプロジェクトが始まりました。

 

 

--たくさんの食べ物があるなかで、なぜチョコレートに決めたのですか。

 

 スーパーや菓子店を回って「何がいいかな」と探しているとき、チョコレートはナッツ類や果物などさまざまな食材を混ぜ込むことができるうえに、日持ちすることにも気づきました。
 また、バレンタインデーに象徴されるように、「好き」や「ありがとう」といった気持ちを乗せることができる贈り物というイメージが根付いています。病気で疎外感や孤独感を感じている方の心を癒すツールとなり得ると直感しました。

 

 

--患者さん専用ではなく、広く一般の方に向けたお菓子として開発されたのはなぜですか。

 

 試作品ができたとき、表皮水疱症の患者さんのもとに意気込んで持っていったところ「患者のために作らないでほしい」と言われてしまい、意味が分からず茫然としてしまいました。「かわいそうな人が食べるお菓子を作ってもらってもうれしくない」ということだったのです。一般の人が「食べたい」と思うお菓子であり、実は患者さん向けだったというものでなければ、患者さんの疎外感は解消されないことに気づきました。それは私にとって大きな発見でした。
 andewは、一般のチョコレートのようにパキッと折れる硬さはなく、やわらかく、口溶けが滑らかで飲み込みやすい。その上アーモンドやココナッツ、きなこ、昆布など栄養価の高い食材が数多く入っていて、がん患者さんや高齢のために食が細くなった方などにも喜ばれています。
 andewはand youが由来で、みんなと一緒に食べる喜びを感じてほしいという思いを込めています。

 

--医師として起業家として第一線で活躍されていますが、その原動力や今後の展開を教えてください。

 

 私は生後間もなく心臓の難病を患いましたが、手術がうまくいったのでこうして今も生きています。しかし医学が発達していなければ助からなかったと思いますし、高齢になったときにどうなるかは、現在の医学でも分かりません。そこでこの命は無駄にできないという思いがあります。
 表皮水疱症の患者さんのなかには学校に行けなかったり、好きな仕事に就けなかったりする方がいるので、「このチョコレートが支えになっている」「元気が出た」という声をいただくことが、これからもサポートをしていきたいという思いにつながっています。
 また、andewを介して一般の方に難病のことや食べることに困難を抱えているこどもがいることを発信することができています。
 医師として、研究者として医療の現場で感じた疑問や課題について、医療からこぼれてしまうことは、こうした事業のなかで取り組んでいきたいと考えています。また、これからも医療という分野からandewのような試みをともに歩んでくださる方を増やしていきたいです。
 

 

--最後に福祉関係者に向けてメッセージをお願いします。

 

 私の場合は学生時代に患者会を紹介してもらったことが、起業につながりました。福祉関係者の皆さんには、若い人たちのために、現場を体験できる機会をたくさん作ってほしいと思います。
 例えば小学生が福祉施設で体験学習したとしても、すぐに福祉への興味にはつながらないかもしれません。しかし、10年後に「あのときの職員さんは輝いていたな」と思い出し、福祉職を目指す若者が出てくるはずです。
過去と現在がつながって、ひとりの若者の未来が拓く。そんな魅力ある福祉の現場をつくっていただきたいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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